星なんて、もうどうでも良かった。

 チョコの家は公園から程近く、三人でそこまで歩いた。


「あ、じゃあ私、ここなんで」


 彼女が立ち止まり、小声で告げる。
 ずっと俯きながら歩いていた私は、反応が遅れて数歩先を行ってしまった。


「華」


 気遣わしげなトーンに呼ばれてゆっくり顔を上げると、チョコは努めて穏やかに言う。


「大丈夫だよ。……何も分かんない私が言うのも、無責任かもしれないけど」


 首を振った。ううん、と発した自分の声は掠れていて、彼女にきちんと届いていたかは定かでない。


「ありがとう」

「うん。おやすみ」


 彼女が家に入ったのをぼうっと眺めていると、頭上から「行こうか」と声が降ってくる。
 私はそれに頷いて、緩慢にまた足を動かした。

 タカナシ先輩は道中何も喋らず、ただ私に歩幅を合わせてくれた。今は人の優しさが特に沁みる。泣きそうになって、でも私が泣くのは絶対に違うから堪えた。

 その日の夜道はすごく明るくて。どうしてだろうと思うより先に、空をしきりに走っていく星々のせいだと気が付く。


「すみません。わざわざ、ありがとうございました」