誤魔化されるのは、隠されるのは嫌だった。知らずにのうのうと暮らしていくのも、嫌だった。

 再び沈黙が流れて、背中を嫌な汗が伝う。
 でも、もう引き返せない。今日こそは先輩から聞き出すまで折れないと、密かに決意した。

 隣から小さく息を吐く気配がする。彼の声が空気を震わせた。


「鈴木一太、十六歳。高校二年。好きな食べ物はハンバーグ、嫌いな食べ物はにんじんとブロッコリー」

「……知ってます」

「運動とホラーが嫌いだ」

「はい、知ってます」

「得意科目は英語。苦手科目は、」

「知ってます!」


 彼の方を見ずに、勢いだけで遮る。


「……知ってます、そんなことは全部」

「教えろって言ったのはお前だろ」


 そうだけど、そうじゃない。私が知りたいのは、そんなプロフィール帳の項目のようなことじゃなくて。

 きっと、このままだとまたかわされる。防御線を張られて、何も踏み込めずに終わる。
 隙を作らなければいけない。今の彼は素の状態というよりも、私からの攻撃を跳ね返すのに必死なような気がした。


「先輩は以前、お父さんと一緒に住んでいたんですか?」