鎖を握って唇を噛んだ私にお構いなく、タカナシ先輩が空を見上げる。
つられて上を向けば、光の筋が一つ、横切っていくところだった。
「おい、寿司できたぞ。早くこっち来い」
「らっしゃーせー!」
鈴木先輩とチョコがしきりに呼ぶので、立ち上がってそちらへ赴くことにする。自分が悪いのは重々承知だけども、気まずさから逃れられるのは有難かった。
「へいお待ち! マグロ一丁!」
プラスチック容器に盛られた赤身を差し出され、渋々受け取る。
すっかりなりきっているチョコは上機嫌だった。タカナシ先輩にも押し付けがてら、しきりに話しかけている。
「華、こっち来い」
「え、」
不意に後ろへ腕を引かれて、バランスを崩しかけた。こういうところはやはり雑で、大事にされているとは到底思えない。
鈴木先輩はベンチまで私を引っ張ってくると、半ば強制的に座らせる。私が見上げるより先に、彼は隣に腰を下ろした。
「何ですか、急に――」
言葉を遮るかのように、先輩が私の手からマグロを略奪していった。それを断りなく口に放り込んで、あっけらかんと宣う。
「何ってお前、ああいうの好きじゃないだろ」
「はい?」
「グミ。嫌いだろ」