目を伏せた私に、彼がなんてことのない口調でぼやく。そして、次に続いた言葉も、なんとはなしに紡がれた。


「でも一太にとって山田さんがすごく大事っていうのは、分かった」

「え……?」


 それは一体、何を根拠に。特別大事にされている実感など微塵もない。


「俺ら中学から一緒だけど、一太は全然女の子に興味なかったから。同居するってことは、よっぽどだと思う」


 まあ同居に関しては、母からの頼みなんだろうけれど。
 タカナシ先輩がこんなに喋っているのは初めて見たし、鈴木先輩の話をこんなに聞くのも初めてだった。

 夜の公園。いつもと違う空気。
 だからだと思う。少しだけ、大胆なことを聞いてみたくなった。


「鈴木先輩って、私のこと……好き、なんですかね」


 客観的に見て、彼が私をどう感じているのかが知りたかった。好きか嫌いかで綺麗に割り切れるとは思っていないけれど、どっちに振れているのか、くらいは。


「それは、俺が答えたらフェアじゃなくない?」


 芯のある、真っ直ぐな声だった。普段ぼそぼそと話す様子からは想像もできない程、はっきりと告げられる。まるで、ずるしたルール違反者を咎めるような。


「――あ、」