危ない。この状態で渾身のダジャレを放たれ、ましてや黙られでもしたら、フォローできる気がしなかった。たまに呼吸をするように寒いオヤジギャグを挟んでくるのはやめて頂きたい。
彼はもう一つのブランコに腰かけると、私を凝視したまま唐突に言った。
「山田さんって、一太のこと好きなの?」
「はい!?」
思いのほか大きな声を上げてしまって、慌てて口を覆う。
チョコと鈴木先輩は相変わらず寿司づくりに格闘していて、こちらの様子には気づいていないようだった。
「何ですかいきなり……好きじゃないですよ」
「そうなんだ」
あっさり引き下がった彼に拍子抜けする。
やはりこの人は読めないな、と首を傾げた私を見かねてか、タカナシ先輩が付け足した。
「一太が急に女の子と二人で暮らすっていうから、婚約者でもできたのかと思って」
「……タカナシ先輩は、何も聞いてないんですか?」
「何を?」
何を――それは、私だって分からない。少なくとも、仲のいいタカナシ先輩には何かしら話しているんじゃないだろうかと思ったのだ。
しかし彼の口ぶりからして、私と鈴木先輩が一緒に住むことになった事情も知らない様子である。
「一太、口堅いから聞いてもどうせ教えてくれないだろうし」