「華。お前、星は興味あるか」


 七月も上旬。本格的に蒸し熱くなってきた。
 朝から湿度の高い空気にうんざりしつつも、先輩と二人で朝食をとっていた時である。唐突に質問を投げかけられ、私は首を傾げた。


「星、ですか?」

「ああ」

「まあ、そうですね。綺麗だとは思いますけど……」


 一体、いきなり何の話をし出すのだろう。
 先輩は私の反応に「そうか」と軽く頷くと、本題に入るようだった。


「今月末、タカナシと流星群を見に行く約束をしててな。華もどうだ」

「え」


 それはつまり、二人のデートなのでは? 私が邪魔しちゃ絶対にいけないと思うんだけれど。
 思わず顔を引きつらせると、先輩は見かねたように続ける。


「佐藤も連れてきたらどうだ。どうせ暇なんだろう」

「どうせって何ですか、失礼ですよ」


 チョコの名誉のために、一応反抗しておいた。すると彼が口角を上げる。


「それとも、俺と二人きりが良かったか?」

「嫌ですよ。不審者と夜闇に二人きりだなんて」

「こんなに顔のいい不審者がどこにいる」

「目の前にいますねえ」


 二週間ほど前から始まった謎のナルシスト発言にも、だいぶ手慣れてきた。適当にいなしながら味噌汁を飲み干す。

 立ち上がった私に、先輩も残りのご飯をかき込んで、思い切りむせていた。……ちょっと胸がスカッとしたのは内緒だ。