問題はそこじゃない。


「私、先輩に嫌われるようなことしたかなと思って……」


 一番の懸念点はやはりそこだった。
 比較的正直に物事を述べそうな先輩が、言葉にせず遠回しに態度で訴えかけてくるほど、私は彼に何かしてしまっただろうかと。


「それさ、単に鈴木先輩が華のこと好きっていう可能性はないの?」

「いや、ないでしょ。だって、私が一番嫌いなタイプ――」

「あー、自意識過剰な人は論外、だっけ」


 彼女の言葉に深く頷く。
 チョコとタカナシ先輩が家に来た際、私が言ったことだ。それを鈴木先輩だって側で聞いていただろうし、もし仮に私を好きだとして、わざわざ私の嫌いなタイプを演じる理由が分からない。

 そうなるとますます、先輩は私に嫌われようとしているのだと思えてならなかった。


「うーん。確かに……でも急だよねえ」


 チョコが腕を組んで宙を見つめる。

 急ではあった。でも、心当たりがないわけでもない。


『お母さんがアメリカから帰ってきたら、先輩も一緒に三人で暮らせばいいんじゃない?』


 私の発言から、明らかに先輩も母も様子が変わった。
 だからといってその理由までは分からないし、結局、本人に聞くしかないのだと思う。頑なに口を割ってくれないけれど。


「ところで華」