ああ、本当に憂鬱だ。
 とうとう辿り着いてしまったマンションを前にして、気分は急降下である。

 放課後、先輩と同じ電車で鉢合わせることのないよう、いつもより二本遅い便に乗った。それに加えスーパーにも寄って、時間をかけて買い物を済ませた。

 とはいえ、いつまでも帰らないわけにはいかない。仕方なく重たい足を動かし、エレベーターに乗り込む。


「あら。ハナちゃん?」


 背後から聞こえた声に振り返ると、一人の女性がこちらを見つめていた。私は会釈をして、緩く笑いかける。


「伊集院さん、こんばんは」

「こんばんは。いま学校の帰りかしら?」

「ああ……そうなんです。買い物していたら少し遅くなって」

「そうなの」


 偉いわねえ、と彼女が口元に手を当て微笑んだ。
 二人分の体重を預かったエレベーターが動き出して、完全な密室に戸惑う。

 お隣の伊集院さん。何度かマンションですれ違って挨拶はしたことがあるけれど、特別よく話したことはない。
 そんな人と二人きりになってしまって、正直居心地は良いと言えなかった。


「ここのところ、じめじめしててほんとに嫌になっちゃうわよねえ。洗濯物も乾かないし」

「はは……そうですね」