思い返せば、最初からそうだった。
 先輩に彼自身のことを聞いてもふらふらとかわされることが多かったし、曖昧な回答しかもらえない。

 それなのに、向こうは私のことを多分色々知っている。私の知らないところで、母と知らないことを話している。

 不安になってしまうのだ。知らない、ということは、それだけで心に余裕がなくなってしまう。


「秘密主義? まあそりゃ、エロ本の一つや二つ、隠してるでしょ」

「エっ、……ロ本って」


 予期せぬ爆弾投下に、分かりやすく動揺してしまった。
 数秒遅れてチョコを軽く睨むと、「ごめんごめん」と全く気持ちのこもっていない謝罪が返ってくる。


「何? 華、先輩の部屋に入ったとか?」

「入ってないよ。お互いの部屋は立ち入り禁止だから」


 こんな話をして、この後どんな顔で家に帰ればいいんだ一体。ただでさえスーパー気まずいのに。


「まあ確かに、鈴木先輩って掴みどころないかも。何考えてるのか分からないし、私はちょっと苦手かなー」


 さらりと述べられたチョコの言葉に、私は「えっ」と思わず声を上げる。


「チョコ、鈴木先輩のこと苦手なの?」

「苦手っていうか、タカナシ先輩と比べるとっていう話~」

「へえ……私はタカナシ先輩の方がよく分かんないけど」


 あの人は何にも考えてないよ、というチョコの失礼極まりない発言に苦笑しつつ、適当に頷いておいた。