二ヶ月以上も一緒に生活していると、流石に情がわくというか。
慄きつつも答えると、先輩は重ねて問うてくる。
「一緒に暮らすのがどれだけ大変か分かってるのか」
「はあ? 何言ってんですか。そんなの今だって大変ですよ。先輩は好き嫌いばっかだし、うるさいし、」
「ああ、そうだ。お前だって最初は俺と暮らすの嫌がってただろ。この先、ずっと俺の我儘に付き合うつもりか?」
何が言いたいのだろう。というか、自覚があるのなら少しくらい改善して欲しいものだ。
「ちゃんとよく考えろ。簡単に決めるんじゃない」
それが最後だったのか、言い終えるなり彼が立ち上がる。
ちゃんと考えろ? 簡単に決めるな?
よく言う。一番最初、強引に私を引っ張っていったくせに。誰のせいでこの共同生活が始まったと思っているのだろう。
「そのつもりだって言ったらどうするんですか」
自室のドアを開けようとした彼の背中に、声だけで追い縋った。
「先輩の我儘なんて今更ですよ。これからも私が聞いてあげるって言ったら、先輩は一緒に暮らしてくれるんですか?」
僅かに向こうの空気が怯んだ気がした。しかしそれは一瞬で、彼はすぐさま切り返してくる。
「……お前が本当に望むなら、俺はいくらだってそうする」
だったら、お母さんに聞かれた時も頷けば良かったじゃない。
皮肉は喉の奥で詰まって、ドアの向こうに消えた背中に届くことはなかった。