そう、と安心したように笑った母に、私は半ば怒りにも似た感情をぶつけざるを得なかった。


「お願いだから、無茶しないでよ。今回みたいに、倒れたってすぐに会いに行けるわけじゃないんだから」

「分かってるわよ。休みに関してはむしろ、そっちにいた時より寛容だから。しっかり休ませてもらうわ」

「なら良いけど……」


 とにかく、何事もなくて良かった。
 一息ついて、体から力が抜ける。そうだ、と一つ、昨日考えたことを思い出した。


「ねえお母さん。私、考えたんだけど」


 とそこで、今まで隣で黙って静観していた先輩に目配せする。彼は私の意図が分からず、首を捻っただけだった。


「お母さんがアメリカから帰ってきたら、先輩も一緒に三人で暮らせばいいんじゃない?」


 割と名案だと思う。先輩は誰かが監視していないとすぐに堕落した生活に逆戻りだし、お金のことを鑑みても、絶対に一緒に暮らした方がお得だ。

 しかし、部屋には静寂が広がった。

 母は純粋に驚いたのか、目を真ん丸にして画面越しに私を見つめている。先輩は一言も発すことなく、通話画面に視線を落とすだけだった。


「あー……」