「いやぁ~、心配かけてごめんねえ。ほんとにただの貧血だから」


 母と直接話すことができたのは、翌朝のことだった。

 昨晩は一睡もできず、先輩とリビングで黙って時間の経過を待った。朝方、私の方に電話が来て、母の容態を知ることができたのだ。


「もう、本当に心配したんだから! 昨日だって朝からずっと連絡とれてなかったし……」


 電話は週に一回だけれど、メールでやり取りは毎日している。しかし昨日は全く返信がこないし、おかしいなと感じてはいた。
 午後からの来客でばたばたしていたから、その時はそこまで気に留めていなかったのだ。


「お母さん、ちゃんとご飯食べてる? 何か痩せたんじゃない?」


 ビデオ通話だったため、久しぶりに母の顔をきちんと見ることができた。
 私の指摘に、母は「そうね」と眉尻を下げる。


「確かに痩せたかも。華のご飯が恋しくて」

「……仕事、結構忙しいの?」

「うーん。そうねえ……やっぱり、なかなか大変かしら」


 いくら以前アメリカへ渡ったことがあるといっても、慣れない部分は少なからずあるだろう。それに加えて仕事もこなすとなると、精神的負担もあったのかもしれない。


「華は元気?」

「自分が倒れてるのに私の心配? 大丈夫だよ。風邪引いたこともないし」