首を全力で振って、震える喉で叫ぶ。
「嫌です……だってそんなの、お母さんが死んじゃうみたいじゃないですか!」
「華、」
「縁起でもないこと言わないで下さい! 冗談じゃありません!」
怖い。叫んでいないと、誰かに当たり散らしていないと、気が狂ってしまいそうだった。
もし――その先なんて考えたくないけれど、思考はどんどん悪い方へ流れてしまう。
お母さんがいなくなったらどうするの。こんなに離れた状態で、顔を見られず声も聞けず、そのまま会えなくなったら私は。
これからずっと、一人なの?
「華」
存外落ち着いたトーンだった。
顔を上げるより先に、彼の片腕が私の背中に回る。とんとん、と宥めるように軽くたたかれ、その拍子に生温かいものが頬を伝った。
「俺の言い方が悪かったな。……大丈夫だ。死なない」
ただの気休めと言ってしまえば、そうかもしれない。何の確証もないし断言だってできないけれど、彼にそう言われると少し気持ちが落ち着いた。
ようやく泣く余裕が生まれて、それを自覚すると涙が次から次へと零れ落ちる。
背中を撫でる手がぎこちないのに気が付き、それと同時に、自分は一人じゃないんだなと、ぼんやり思った。