低い声。絞り出すかのように紡がれた言葉に、思わず固まる。
「好きじゃないって……だって、洋画じゃなきゃ嫌だって、先輩が言ったんですよ」
「洋画の方が英語の勉強になるってだけだ。映画自体、特に興味はない」
また、勉強。
私が映画鑑賞に誘った時、頷いてくれて少し嬉しかった。正直私も映画なんてそこまで重要じゃなくて、先輩と娯楽を共有できていることが大事だったのだ。
それなのに、先輩にとっては、あの時も所詮「勉強」でしかなかったということ。
「勉強勉強って……そんなに頑張ってどうするんですか。毎日根詰めてやる必要、あるんですか?」
将来のためって、前に聞いたけれど。それが的を得た答えじゃないことくらい、彼が私に何か隠していることくらい分かる。
「毎日部屋に引きこもって、何時間も机に座りっぱなしで……体壊したらどうするんですか。今は私がご飯も作ってますしいいですけど、私がいなくなったら先輩、また倒れちゃいますよ」
自分で言いながら、本当にそうだなと思った。
この人は、私がいなくなった後どうするんだろう。また一人で暮らすんだろうか。いつまで? この先ずっと?
「……先輩、」