夕飯も一緒にどうか、と提案したものの、チョコとタカナシ先輩はそれぞれ自分の家で済ませるとのことだった。そういうところは真面目なんだか、謙虚なんだかよく分からない。
今日の献立は野菜の豚肉巻き、オクラ納豆、ご飯、わかめと卵のスープ。
にんじんの千切りを肉巻きに紛れ込ませたのがバレて、例の如く先輩は喚いていた。
夕飯の片付けを終え、お風呂掃除を済ませてからリビングへ顔を出す。すると、先輩は珍しくソファに座ってテレビを鑑賞していた。
こっそり背後から近寄る。
どうやら先輩はテレビを見ているのではなくて、ゲームをしているようだ。タカナシ先輩の厚意で、しばらくここに置いておくことになったのだ。
「先輩、すっかりハマってますね」
別段大きな声を出したつもりはなかったけれど、驚かせるには十分だったらしい。
私の声に肩を僅かにびくつかせた先輩が、振り返って顔を上げる。
「華もやるか?」
「私はいいです。得意じゃないので」
小学生の時に、友達の家で少しゲームを触らせてもらったことがある。でもすぐにゲームオーバーになってしまうし、多分向いていないんだと思う。
彼は私の返事を聞いて、逡巡するようにコントローラーを手放した。
「それより、お風呂もう入りますか? 入るならお湯溜めますけど」