俺様だか何だか知らないけど、ただの自己中じゃない?
そんな文句は内心にとどめておくことにした。大勢の女子を敵に回すかもしれない。
「えー、俺様キライ?」
「嫌い。無理。自意識過剰な人は論外」
結局心の中で思っていたことよりもはっきりと述べてしまった。
チョコは「ふうん」と間延びした声で返してくる。特に気を悪くしたわけではないようだった。
それにしても、この漫画のヒーローになんとなく既視感というか、デジャヴというか。
「……あ。鈴木先輩か」
どこから湧いてくるのだ、と問いただしたい自信。最初に私を連れ戻そうとした時の強引さと、好き嫌い故の我儘。考えれば考えるほど、鈴木先輩にそっくりだ。
「何だ。俺がどうした」
「いえ、やっぱり最悪だなと思っただけです」
「照れるな」
「褒めたつもりはないんですけど」
彼の脳内辞典には、ポジティブな言葉しか掲載されていないんだろうか。まあそれならそれで人生楽しそうでいいと思う。
「華ってツンデレですよね。鈴木先輩、ツンデレ好きですか?」
なんてことを聞いてくれるんだ。今度こそ遠慮なく顔をしかめる。
「ああ。ツンデレが一番だ」
「お願いですからもう喋らないで下さい」
なんだこの休日。なんだこの同居人。
私はこめかみを沈痛に押さえ、大きなため息を一つ、リビングに響かせた。