彼が悪い人ではないのは、勿論分かっている。
そういう風に言われるのも一種の冗談というか、「恋人」だのと言われた時のネタを絡めて少しふざけているのだと思う。
でも多分、もう一つ。
「それは、……私に同情してるだけ、だと思うよ」
「同情?」
未だに母と彼がどんな会話をしたのか、どこまで情報共有したのかは謎だけれど。でも「知り合い」ということは、母の仕事の都合やそれに伴う私の事情も、知っているんだろう。
知った上できっと親と離れることに同情して、頓珍漢なことを言って雰囲気を和らげたり、常に外出はついてきたりしてくれているんじゃないだろうか。
どうしたって私には、いつまでも彼の本質を掴めないでいた。
うやむやにするのも憚られて、私はチョコに鈴木先輩と同居している理由をかいつまんで説明した。
話が終わるなり、彼女は意外そうに声を上げる。
「へえ! お母さん、すごい人ねえ」
「……うん」
「女の人でアメリカに派遣だなんて、相当優秀よ。あーあ、私もそんなステキウーマンになりたぁい」
なんというか、想定していた反応と違った。
重たく湿った空気になってしまうことをある程度覚悟して話したけれど、彼女はそんなのどこ吹く風。非常にあっさりしている。
「私も同情した方が良かった?」