「食べたら帰って下さいよ」
冷蔵庫が空っぽだったため、近くのコンビニで夕飯を調達してきた。私はミートソーススパゲティで、彼はカツ丼。
昨日まで母と囲んでいたダイニングテーブルに、今日会ったばかりの人と二人。
彼は意外にも「いただきます」としっかり手を合わせてから、米粒をかき込み始めた。
「はへへんへえほ」
「食べながら喋らないで下さい」
行儀がいいのやら悪いのやら。
私の指摘に、彼は口に詰め込んだものをしっかり飲み込んでから、再度断言した。
「帰んねえよ」
「ええ……」
「ドン引きすんな」
いや、だって。このまま朝まで居座るつもりなんだろうか。それはすごく困る。
「言ったろ、今日はこっちで寝るって。そんで、明日は俺の家に帰るぞ」
さも当然の如く宣う彼に、私は遠慮なく顔をしかめた。
ここで彼と夜を越すのも嫌だし、彼の家に行くのも嫌だ。どっちにしたって二人きりになるのは避けられないらしい。
「あのですね。ちょっといいですか」