一応質問の体裁は保っているが、きっと鈴木先輩に選択権はない。
 赤い服と帽子を身に着けたおじさんの高い笑い声が響いて、ゲームが始まった。


「待て、どうして俺は休日にゲームをしなければいけないんだ。タカナシ、しかもお前と」

「俺じゃ不満?」

「当たり前だ。やるなら華と――、華?」


 突然名前を呼ばれて振り返る。しまった、せっかくこっそり抜け出せるかと思ったのに。


「おい、華。どこ行くんだ。砂糖も」

「うーん、惜しいです! 佐藤、なんですよねえ」


 律義に返答するチョコの背中をぐいぐい押しながら、私は廊下へ向かった。


「私たちちょっと買い物行ってくるので! 先輩方はゆっくりしてて下さい」

「それなら砂糖じゃなくて俺が……」

「こっちはこっちで積もる話があるので! それでは!」


 やや強引に話をまとめ、リビングを後にする。

 食材の買い出しに行くのは本当だったけれど、一番の目的は鈴木先輩が気兼ねなく息抜きができるように、だった。
 毎日私と一緒では、流石に息が詰まるだろう。休みの日だってろくに遊びに行かないし、気を遣われているのだとしたら申し訳ない。

 マンションのエレベーターを待っている最中、チョコが「で?」と顔を向けてくる。


「積もる話というのは何かな? 山田くん」