「どうもー、こんにちは」


 インターホンが鳴って十数秒。玄関のドアを開けた先にいたのは、チョコとタカナシ先輩だった。

 土曜日の昼下がりである。
 鈴木先輩は自室にこもっており、恐らく勉強中だろう。

 陽気に手を挙げ挨拶してみせるチョコに、私はその場で固まった。


「いや――何でチョコがいるの?」


 呼んだというか、来る予定だったのはタカナシ先輩だけのはず。さも当然の如く佇む彼女は、「だってえ」と大袈裟に口を尖らせる。


「タカナシ先輩だけずるいじゃない。私だって二人の愛の巣にお邪魔してみたかったんですよぅ」


 ねっ、タカナシ先輩! と隣に同意を求める彼女。
 突っ込んだところで訂正をしてもらえないのは目に見えていたので、ため息をつくだけにとどめた。


『……一つだけ、お願いしてもいいですか?』


 そもそもどうしてタカナシ先輩を招くことになったのかというと、先週の私の発言に遡る。

 鈴木先輩は相変わらず毎日勉強漬けだ。先月は映画鑑賞に付き合ってくれたものの、彼にはやはり息抜きというか、何か他に気分転換となるものが必要だと思う。
 とはいえ家の中には娯楽となるものがないし、私はふと思いついてタカナシ先輩に委託したのだ。


「はい、これ」