真面目なのか、はたまた変わっているのか。恐らく後者だろうけれど。
軽く手を振って遠慮しておいたものの、珍しくタカナシ先輩は不服そうだった。よほど思うところがあったのだろうか。
私は数秒思案を巡らせ、タカナシ先輩に近づく。
「……一つだけ、お願いしてもいいですか?」
彼の耳に唇を寄せ、小声で頼み込む。
鈴木先輩には聞こえないように、ぽそぽそと話す私の声を最後まで聞いたタカナシ先輩は、「なんだ」と首を傾げた。
「そんなんでいいの?」
「はい。お願いします」
私が頷くと同時、鈴木先輩が弾かれたように立ち上がる。
「なんだ! 華、いまタカナシに何を言ったんだ!」
「秘密です」
「二人だけのヒ・ミ・ツ、か! いやらしいぞ!」
「もうほんとにやめて下さい」
全くそんなつもりはなかったのに、変な空気になってしまいそうではないか。
タカナシ先輩からもどうにか言ってやって下さいよ、と投げやりに目を向けた時だった。
「秘密がバレて、ひっ、見つかった! ……なんてね」
…………ああこれ、カオスだ。
一気に体感氷点下まで下がった温度。タカナシ先輩も鈴木先輩に負けず劣らずとんでもない爆弾兵器であると学習した今日この頃であった。