頼まれても絶対に食べたくない。いや、そもそも。
「……今日の夕飯はカップ麺じゃなくて、ハンバーグです」
もういい加減インスタントは飽きたし、先輩は先輩で反省していたみたいだし。
仕方ないから、先輩の好きなメニューを作ってあげようと思う。にんじんは控えめで。
「華。一つ聞くが」
「はい」
「付け合わせにブロッコリーを添える予定は」
「ありますね」
「ジーザスッ!」
「黙って下さい」
廊下にうずくまった鈴木先輩を一瞥して、深々とため息をつく。……本当に悪いと思っているんだろうか、この人。
頭を抱えて唸る彼を黙って見下ろしていると、タカナシ先輩がおもむろに言った。
「何か、して欲しいことある?」
「えっ?」
一体なんだ、藪から棒に。
彼の発言は飛躍しがちで、都度チャンネルの合わせ方に苦労する。
「お詫びに、何でも一つ言うこと聞く」
「ええ……」
いや、困る。そんなにいきなり言われたって、さっぱりだ。
それに、タカナシ先輩にそこまでしてもらうほどのことではない。
「お気遣いありがとうございます。大丈夫ですよ、気にしないで下さい」