それに、十九歳以上でないと観覧できない。
 でもやはり生粋のお笑いファンとしては、叶えたい夢ではあった。


「あれって、一組二名までだったよね」


 一人盛り上がる私に、タカナシ先輩の表情は涼しい。


「そう、ですね。確か」

「じゃあ、もし応募して当たったら、一緒に見に行く?」


 青天の霹靂とは、まさにこのことじゃなかろうか。
 冗談かもしれないし、そもそも仮の話で。それでも、動揺しなかったと言えば嘘になる。

 我に返って、慌てて口を開いた。


「タカナシ先輩、それは――」

「デートか?」

「んぎゃっ!?」


 突如横から顔を出した存在に、勢いよく飛び跳ねる。ほう、と一息ついて、それから声の主を睨みつけた。

 当の本人は私の視線に臆することなく、のうのうと佇んでいる。


「俺という存在がありながら他の奴とデートだなんて、それはいただけないな」

「誤解を招く言い方やめてもらえませんかね」

「俺のタカナシにちょっかいを出されては困る」

「あー……そっちですか。了解です」


 もはや何が了解なんだか。というか、どこまでが冗談でどこまでが本当なのかの見極めが段々難しくなっている気がする。


「華、今日こそ納豆味を食べないか。うまいぞ」

「嫌ですよ」