芸人のフィギュアセット、それも私が大好きな「15時のヒロイン」の。
 目に見えるところに飾って、家事の合間に癒されようと思っていた。


『先輩、ここにあったフィギュア知りません?』


 忽然と姿を消したそれの居場所を聞いたところ、彼から返ってきたのは耳を疑う回答だった。


『ああ……タカナシにあげた』

『はあ!?』


 どうやら、タカナシ先輩も「15時のヒロイン」の大ファンらしい。
 だからって、許可もなく無断で持ち出すだなんて。言語道断だ。

 彼曰く、私が自分の部屋に持って行かず放っておいているように見えたから、どうでもいいのだと思った、とのこと。
 とんでもない。私は丁寧に飾っておいたつもりだった。


「タカナシには明日返すよう言ってくる」

「別にいいです」

「どうしてだ。大事なんだろ」


 そりゃあそうだ。M-1オタクの私としては、宝物と言っても過言ではない。


「いいです。一度あげたものなのに返せとか、失礼なので」


 タカナシ先輩もファンだということは、きっと貰った時すごく嬉しかったんだろう。全く興味のない人に渡されたなら返して欲しいところだけども、そうじゃないのなら。


「それに、恋人からのプレゼントですし」

「……は?」