正面、横、斜め、あらゆるアングルから撮影を行う様は、さながらプロカメラマンだ。
いつの間にか教室外からもギャラリーが集まり、芸能人の宣材撮影のようになっていた。
なぜか二人とも乗り気だし、ポージングまでし出すしで、こっちが居たたまれない。
「良かったね。みんな華に泣きながら感謝すると思うよ」
盛り上がる現場を横目に玉子焼きを頬張っていると、チョコがそう呟いた。
感謝。……感謝?
疎まれはすれど、感謝なんてとんでもないと思っていた。というか当事者である私が、平穏な昼休みを邪魔されて泣きたくなっている。
「何で?」
「突然の推し供給」
「推し……え?」
「そっかぁ~華ちゃんにはまだ早いかなぁそういうお話は~」
わざとらしく取り繕ったチョコに、私は不機嫌を隠さず口を曲げた。
そんな様子を見かねてか、彼女はちょいちょいと手招きをする。身を寄せろ、ということらしい。
「だから、つまり――」
耳元で彼女の講義が始まる。
かくかくしかじか、知らなかった世界の扉を開いてしまったその日。何だか罪悪感が胸を突いて、家に帰ってからも先輩の顔をまともに見られなかった。