違う。注意すべきは絶対そこじゃない。
彼の登場で、教室内の喧騒は大きくなったような気がした。
私の机を中心にして腰を下ろした先輩二人に、最早抵抗する気力も起きない。
「嗚呼……推しCPが目の前にいる……」
「ご褒美……? 私明日死ぬ……? 神よ恵みをありがとう……」
後ろから苦しそうな声が聞こえてきたけれど、私が振り返ると目を逸らされてしまった。
それに首を捻りながら、渋々自分の席に座る。ようやく食事を始めようと、一息ついた時だった。
「あ、あの!」
同じクラスの女の子――唐突に声を上げた彼女は、先輩たちに用があるらしい。頬を赤らめて、震える手でスマホを握りしめている。
「お二人の写真を! 撮らせて頂けないでしょうか……!?」
「ああ、いいぞ」
請け負った鈴木先輩に対し、タカナシ先輩は無表情だ。……いや、ピースをしている。ちゃっかりしている。
「あ、もうちょっとくっついてもらって……」
「こうか?」
「いい感じです! ええと、鈴木先輩がタカナシ先輩の肩を抱く感じで! ああ、すごくいいです! 最高です!」