脊髄反射的に彼女の将来を案じたところで、私はようやくお弁当箱の蓋を開けた。
 二段弁当の上の段には、いつもおかずを詰めている。はずなのに、白米がお目見えした。


「……あ、」


 やってしまった。
 下の段の中身を確認して、間抜けな声が出る。――両方ご飯だ。


「あ~~やっちゃいましたねえ」


 私の手元を見たチョコが、声を上げる。


「ふりかけいる?」

「何でパンなのに持ってるの」

「いや、ポケットに入れっぱなしにしてて」


 彼女がスカートのポケットから、しゃかしゃかと小袋を取り出した。
 それを貰うにしたって、ご飯だけは流石に味気ない。

 購買に行って何か買ってこよう。そう思い、立ち上がった。


「ハナコ――――――!」


 教室中、否、廊下中に響き渡ったであろうそれ(・・)。まず脳裏に浮かんだ感想としては、最悪だ、だった。


「え、何? 鈴木先輩の声じゃない?」

「いや、気のせいだよ」


 チョコが背筋を伸ばして視線をさ迷わせる。
 私は即座に否定して、白米二人分を平らげる覚悟だった。

 そういえば、彼に私のクラスは教えていなかった気がする。
 きっと彼のお弁当は両方おかずだ。私を探しているのだろう。もう本当にやめて欲しい。絶対に見つかりたくない。


「ハナコ、どこだ――――――!」