予想外の回答だった。
 咄嗟に返す言葉が見つからず、目を瞬かせる。


「家出なんてたかが知れてるしねぇ。まあ、仲良くしてるみたいで安心したわ」

「仲良いわけでは……」


 ないと思うんだけど。
 しかし母が嬉しそうなので、断言するのは憚られた。

 代わりに別の話を始めることにする。


「ねえ、お母さんの部屋にある洋書、借りてもいい?」

「いいけど……何かに使うの?」

「ちょっと英語の勉強しようかと思って」


 また先輩の気が向いたら、洋画を観ることになるかもしれない。
 私自身も英語が嫌いじゃないし、もっと分かるようになりたいと思っているのは確かだ。

 ちょうど母の部屋の整理整頓もしようといったところだった。
 本棚にびっしりと詰め込まれている本たちを見回し、少々げんなりする。

 デスク横の小さい棚の上、一冊の本を見つけて手に取った。
 ブックカバーは他のものよりぼろぼろで、頻繁にページを捲られていたのが想像できる。でもそれは決して、粗雑な扱いをされていたわけではないのが分かった。


「……『lonely lovers』?」