「ああ……大丈夫、……ないように言ってるから……」
薄く目を開くと、カーテンの隙間から零れる光が眩しかった。
ぼんやりとした意識の中、ここは自分の部屋ではないな、と考える。
ベッドよりも遥かによく沈むソファに横たわっていることを自覚し、昨夜は映画観賞をしていたのだと思い出した。
先輩がギャーギャー騒いでいたのは何となく覚えている。ただ、途中から記憶がさっぱりだ。
恐らくあのまま寝てしまったんだろう。
だけれど、自分の体にかけられたブランケットには首を捻った。自分でかけた記憶はないし、そもそも私のものではない。
「そっちは、……ちゃんと……てよ」
上半身を軽く起こし、先程から断片的に聞こえる声の方を窺う。
言うまでもなく先輩の声だった。どうやらこんな朝早くから、誰かと電話しているようだ。
しばらくして、声が止む。
静かに彼の部屋のドアが開いて、顔を上げた彼が私を見て固まった。
「おはようございます。早いですね」
壁掛け時計の短針は五を指している。
彼の反応に訝しみながらも、私は口を開いた。
「……ああ、おはよう」