今それを持ち出してくるのか。逃げようも避けようもない。
 私は咄嗟に返す言葉が見つからず、沈黙を貫いた。


「華が気を遣っているのは分かったんだが、俺のために夜更かしは……やっぱり、良くないと思う」


 辺りは暗く、ささやかな街灯が彼の顔を照らす。その横顔は真剣に前を見つめていて、物憂げに映った。


「……先輩は、どうしてそんなに勉強してるんですか?」


 彼の部屋にある本棚を見た時、明らかに高校生向けではない難解なタイトルの書籍を沢山見つけた。
 俺は火星人だ、等と喚いていたのがあながち嘘ではないのではないかと思うくらい、彼は謎に満ちている。

 何気ない質問を装った、核心に迫るような問いであることは、自覚していた。


「将来のためだ」


 彼は予め用意していたかのように、普遍的な回答を寄越す。彼の内側を探ろうとしていたのが、見透かされたのだと思う。

 ちょうどコンビニに辿り着いた。
 明るい店内に触発され、胸の中に燻っていた霧が晴れていく。


「先輩、提案があるのですが」