沈んだ空気を振り切るように言うと、母も頷いて僅かに頬を緩めた。
それから数か月。母のアメリカ行きが正式に決まって、私の受験も終わった頃。
『華。私が向こうに行ってる間のことなんだけど』
『うん』
『私の知り合いがね、華のことみてくれるって』
正直、家事は一通りできるし、一人で生活するのも不可能ではない。
でも母は「女の子の一人暮らしなんて危ないから絶対に駄目」と険しい顔で諭してきた。それは一理あるから、素直にその「知り合い」の方にお世話になるつもりだったんだけれど。
「……はあ」
結局、戻ってきてしまった。いやでも、私は悪くないと思う。
そもそも、月に一度は部屋の掃除も兼ねて定期的に様子を見に来る予定だった。半年後、母と滞りなくここで再開できるように。
だから私の家は断じて、あの変態野郎の住むマンションではない。この年季の入った、アパートだ。
とにかく母には後で改めて事実確認を行うことにして、今日は――いや、あんな風に出てきてしまったのだから、これからはここで。半年間、一人で何とかやっていくしか――。
「おいこら、勝手にふらふらすんじゃねえ」