「待って!」
叫んで呼び止めると、川名が驚いたように振り返る。
「ごめんなさい。川名のこと、迷惑なんて思ってない」
追いついた川名の制服の袖をつかむと、彼が私を見下ろして大きく目を見開いた。
「ほんとはずっと、嬉しかった。困ってるときにいつも、川名が助けてくれたこと。ありがとう」
不器用に笑いかけると、川名が首に手をあてて視線を下げる。
「どーいたしまして。ていうか、まさか三芳がそんな必死に追いかけて来てくれると思わなくて、ちょっとびっくりなんだけど……」
「追いかけるよ。だって私、クラス離れたらもう関係なくなるなんて言っちゃった」
川名の袖をつかむ手に、ぎゅっと力を入れる。
「でもやっぱり、関係なくなっちゃうのは嫌だ。他の人はどうだっていいけど、川名との関係が切れるのは嫌だ。川名に他に好きな人がいても……、勝手でごめんね」
自嘲気味に笑いながら川名の袖を離すと、彼が私の手をぐいっと引っ張った。
「え、ちょっと待って。なんか俺、今一方的にフラれてない……?」
「違うよ。フラれたのは私。ごめんね、カノジョと帰るところを邪魔しちゃって。もうほんとに大丈夫だから、行ってね」
綺麗に笑って手を振りたかったけど、頬に力が入らず笑顔がへにょっと歪む。
だけど川名は私の前から立ち去らず、それどころかつかんだ私の手をぎゅっと握った。