喉が絞められているように苦しい。せっかく手に入れたぬくもりを手放したくはなかった。でも。

「お別れ……なんですね……」

 受け入れるしかないのだ。幕末が、時の流れが、彼を呼び戻している。新選組には、土方さんが必要なのだと。

「そのようだ。すまねえ。どこにも行かねえって、約束したのに」

 眉を下げる土方さん。私は強く首を横に振った。

 きっと私も、頭のどこかでわかっていた。土方さんは、ずっと現代にはいられないのだと。

 わかっていたけど、気づかないふりをしていた。一緒にいたかったから。

「私はあなたを絶対に忘れません。覚えていれば、一緒にいるのと同じです」
「そうか。そうだな。忘れてくれるな」

 忘れられるわけがない。土方さんと過ごした、短かったけれど人生で一番濃かった時間を、初めての恋を、私は忘れない。

「あなたも……私を、覚えていてください」

 毎日思い出してほしいなんて言わない。あなたはこれから、もっと、重要なことを考えないといけなくなる。

 ただ、私の方は、あなたを思わない日なんてないのだろう。

「忘れねえ。当たり前ぇだろ」

 もう、腰のあたりまで彼の体がなくなっている。刀も脇差も、半分ほどが光の粒になっていた。彼のスマホが地面に落ちる寸前、私はそれを咄嗟に受け止めた。