数日後、私は夕方まで、土方さんにパソコンを教えていた。
「こっちで生きる覚悟を決めたからには、派祖根くらいできねばなるまい」と、彼が言ったからだ。
土方さんにとって現代で生きるということは、やっぱり、覚悟を決めるようなことなんだ。
単に幕末に戻ることを諦めた、と取れないこともない。
故郷に帰れない土方さんを見ていると痛々しくもあり、切なくもある。
でも私は、土方さんを支えていくって決めたんだ。なんでも協力しなきゃ。
土方さんはすっかりスマホを使いこなせるようになっていたので、パソコンもすぐに覚えられると思いきや、やはり物事はそううまくはいかなかった。
「hi、ji、ka、tA……おい、なんだこれ。いきなり大きな文字になったぞ」
「シフト押しちゃったんじゃないですか?」
「師父戸?」
さすがの土方さんも、盛大に躓いた。
ここに来た当初、簡単な数字入力だけを教えたことがあるが、英数字が苦手らしく、それすら危うい。
もっと言うなら、現代の文章に慣れていないので、ただの読み書きにも時間がかかる。アルファベットも知らないので、ローマ字入力も難しい。SNSのアカウント名はやっぱり沖田くんに登録してもらったらしい。
お年寄りにパソコンを教える講師の大変さを、身をもって知った。文化の相違は、同じ国内でも起こりえるのだ。
「やっぱりいきなりは無理ですよ。まずひらがな入力から始めましょう」
「面目ない」