「登録外の番号……。誰だ?」
「出てみろ」
一颯は汐里に促され、電話に出た。
「はい」
『風見です。実はお話が――え、うわぁぁあ!』
「風見さん?どうしました?風見さん?」
電話の相手は被害者の婚約者の風見だった。
話があるとのことだったが、話す前に悲鳴が聞こえた。
相手の電話が床に落ちたのかゴトンという音がして、通話が繋がったままなので物が落ちる音や言い争う声が聞こえる。
「風見さん!」
『何であんなことをしたんだ!?え――ぎゃあぁあッ!?』
電話口から風見の悲鳴と共に、耳障りな肉を裂くような音が聞こえた。
そして、それは何度も聞こえる。
悲鳴は聞こえない。
ただ、何度も肉を裂くような音がする。
「風見さん!おい、お前!風見さんに何をした!?」
叫ぶ一颯の声に返答はない。
代わりに聞こえたのは通話が切れる無機質な一定の音だった。
一颯は歯を食い縛ると、スマートフォンを持っていた手を放り出して上を仰ぐ。
「どうした!?」
「浅川さん?」
「容疑者の一人が殺されたかもしれません……」
汐里と瀬戸は息を飲む。
その後、容疑者の一人だった風見が何者かに殺害されたという通報があった。
通報者は室井、もとい公安警察の氷室だった。
殺害現場は風見の自宅で、手口はほぼ同じ。
急所を複数回刺され殺害され、冷蔵庫と冷凍庫の中身が食い散らかされていた。
《gula》という文字は見つかっていない。
だが、食い散らかされた食料に残された歯形と最初の被害者の現場で採取された歯形が一致。
歯形以外にも今回と前回で食い散らかされた食料から採取された唾液のDNAの型が一一致。
更には前回の事件で容疑者達の口の粘膜からから採取したDNAの型と食料からの型が一人、一致した人物がいた。
安食ミチルである。
彼女のことは当初から疑っていた。
被害者の姪と名乗りながらも実際には姪は存在していない。
DNA鑑定の結果からも被害者と血縁関係は認められず、赤の他人。
つまり、偽りの身の上ということになる。
「安食ミチルに逮捕状が出た。行くぞ」
一颯は汐里と瀬戸、数人の捜査員と共に安食ミチルの逮捕へと向かった。
――が、また問題が発生した。
いわずもがな、麗がまたやらかしたのだ。