親族や友人への聞き込みの結果、被害者と被害者が経営するレストランは《七つの大罪》と関連していることが発覚。
何でも、被害者は数年前に夫と離婚し、レストランの経営も不振で心身ともに疲弊していた頃に《七つの大罪》への勧誘があったらしい。
誰が勧誘したのかは不明。
ただ、聞き込みで不審な点が浮上した。
「え、安食は被害者の姪ではない?」
大人数で言ってはあれだと車で待っていた汐里が飲むヨーグルトを飲みながら、眉をひそめる。
一颯と瀬戸も聞き込みから戻り、汐里が買っておいてくれた飲むヨーグルトを飲む。
何故飲むヨーグルトなのかは聞かない。
ちなみに味は一颯がイチゴ、汐里がプレーン、瀬戸が桃である。
好みを熟知したチョイスに、一颯は若干引いてしまったのは死んでも口には出せない。
「はい。被害者は一人っ子で兄弟はなく、別れた夫にも姪はいなかったようです」
「兄弟はなく、姪はいない。……つまり、安食は嘘をついている?」
「その可能性があります。あと、友人が言うには安食に似た女が被害者と並んで歩いているのを見かけたことがあったとのことです」
「ふぅん……。よし、他の従業員への聴取も行う。……嫌な臭いがする」
汐里はズズズッと飲むヨーグルトを飲み終え、ごみ袋に入れた。
こういう時の彼女の所謂刑事の勘というものは当たる。
嫌な臭いがすると思えば、大体がクロである可能性が高い。
「分かりました」
一颯はドリンクホルダーに飲むヨーグルトを置いて、車のエンジンをかける。
後部座席の瀬戸がシートベルトを締めるのを確認してから車を発進させた。
他の従業員の話を聞けば、犯人へ繋がる有力な情報が入る。
犯人の目星は大体ついているが、それを確実視にするには他の従業員の聴取が必要だ。
だが、問題もある。
聴取をまだ行っていない他の従業員は他に二人しかいない。
加えて、潜入捜査中の氷室を除いた従業員が《七つの大罪》の信者と仮定したとき、素直に情報を話すか不明だ。
話さなければ犯人の擁護と隠匿の罪を問えるが、捕まっても話さない場合もある。
そんなことを考えていたら、一颯のスマートフォンに着信が入る。
運転中の彼は出れないが、急用かもしれない。
そう思って車を路肩に停め、スマートフォンを手に取る。
ディスプレイには登録外の番号が表示されている。