「それで、犯人誰なの?まだ分かんないの?何してんの、お兄ちゃん達は?」





瀬戸の隣に座って自由気ままにしている麗はインターンに来ているとは思えない態度だ。
これで警視庁つきの記者になりたいと言ってるのだから本末転倒である。
しかも、捜査中だというのに、遠回しに兄を含めた捜査一課の刑事を無能扱いしている。
その発言に汐里だけてなく、周りの刑事達からも冷たい視線が瀬戸に刺さる。





「麗、頼むから余計なことは言わないでくれ。こっちは仕事、お前はインターンに来た大学生って立場なんだ」




「余計なこと言ってないもん。事実だもん」





「麗!」





一颯は瀬戸が哀れになる。
最初こそはクソ生意気だった彼だが、今ではしっかり先輩や上司を敬い、すっかり打ち解けている。
赤星とは最初こそは合わなかったものの、何だかんだで仲が良い。
周りも認め始まった矢先にこれだ。




「瀬戸、聞き込みに行くから出るぞ」





「浅川さん!はい!」





「あ、なら私も――」





「瀬戸さんは此処に残って下さい。貴女が現場に来ると邪魔です」





一颯はバッサリ言ってのけた。
彼にしては珍しくストレートな物言いに、周りは「お」という顔をする。
瀬戸に関してはまるで救世主を見るかのような目で一颯を見ている。
ハッキリとした一颯の物言いに、麗は顔を真っ赤にしていた。




「邪魔になるって何ですか!こっちはインターンなんですよ!?」





「インターンならば、俺達の仕事を貶すような真似は止めてください。俺達はこの仕事に誇りを持って、真剣に取り組んでいるんです。少しでも早く犯人を捕まえて、被害者やその家族の無念を晴らすために」





「そんな口聞いて良いの!?パパに――」





「言うならどうぞ。その時は本当は頼りたくない親の権力に頼らせてもらいますから」





「親の権力に……?」






「知りたいなら《パパ》に聞かれてはいかがですか?」





一颯は昔パーティーに参加して培った愛想の良い笑みを浮かべて、汐里と瀬戸と共に捜査一課のフロアを出た。
その後に続くように、麗が署長室の方に走っていくのが見えた。





「浅川さんってなかなかの負けず嫌いですよね。それが素ですか?」





「大人げないな、俺……」





「いやぁ、スカッとした。ボタンがあれば、皆満場一致でスカッとだな」





瀬戸と汐里は自責の念に苛まれる一颯に対して、楽しげだった。
何も知らないのに、インターンで来ている大学生にとやかく言われるのが無性に腹立たしかった。
それが大人げない形だったとしても、正したかった。
自分達がどれだけ懸命に捜査しているのかを。
この仕事に誇りを持っているのかを。