「――で、何故室井は完全にシロなんだ?」





捜査会議後、汐里と一颯は喫煙室にいる司馬の所に呼ばれた。
此処に瀬戸がいないのは余計なことをしかねない妹の監視があるからであろう。




「何も知らずに私を庇ったんですか?公私混同?」






「まあ、姪っ子だし、公私混同と言われればそうだな。それに《何か》思うことがあっての発言だろうと思ってな。事実、思うことがあるようだし」






司馬は全てを見通したかのように微笑む。

捜査一課の課長というだけあり切れ者なのには違いないのだが、普段が温厚なだけあってそれを目の当たりにすると鳥肌ものである。





「食えない人ですね。……浅川、室井を見て何か感じなかったか?」





一颯は急に話を振られ、「へ?」とすっとんきょうな声が出た。
だが、すぐに聴取で見た室井の姿を思い出す。
清潔感があり、口許と目元にほくろがある気弱なイケメンという印象の室井。
昨日同様一瞬公安の氷室に似てるなーって感じたが、氷室はあんなにビビりではない。
むしろ、the公安という感じの圧力を持っている。





「貴女のガン飛ばしにビビってたかわいそうなイケメン……」





「……お前の目は節穴かッ!?アイツは公安の氷室だ!恐らく潜入捜査中、つまり、あのレストランは公安にマークされてる」






「え!?アレって氷室さん!?似てるなーって昨日から思ってはいたんですけど。てか、公安にマークされてるって、もしかして――」





「あのレストランは七つの大罪に関係している。もしかしたら、信者なのかもしれない」





汐里が室井にガンを飛ばしていた理由と昨日抱いた二つの引っ掛かりをが分かり、一颯はすっきりした。
だが、次はレストランが七つの大罪の信者である可能性の浮上に混乱する。
確かに被害者を殺害したのは七つの大罪の罪人の一人、暴食。
七つの大罪が関連しているのは予想がついていたが、まさか信者である可能性は予想していなかった。




「さすが、元カレ。変装してても気付く――いででで!」





汐里は叔父と言えど、上司である司馬の足を手加減なしに踏みつける。
グリグリと擂り潰すように踏まれ、かなり痛そうだ。
一颯は司馬に同情しつつも助けない。
とばっちりを食らいたくないから。