その後。
可我士は放火と殺人の罪で逮捕された。
国会議員の自宅放火の犯人が養子の息子だったことに世間の動揺は必須。
それに加え、養子の息子が国会議員である養父とその妻で養母に虐待されていたことも明らかになった。
虐待の件は養子の息子の証言と《とある》人物からの情報提供によるもの。
「《とある》人物って東雲官房長官でしょ?」
居酒屋で週刊誌を見ていた赤星が顔を上げ、斜め向かいに座る一颯を見た。
《とある》人物と週刊誌には書いてあるが、一颯の周りでは彼の父が情報源であることが知られている。
虐待が公になった聴取に養母は黙秘しているが、養子の息子と立場が国のNo.2である一颯の父が言うのであれば……と週刊誌は形にしたようだ。
「父は本人達が虐待を否定した後も極秘裏に蛇山議員の近辺を探っていたようで、今回週刊誌に載ったのもその極秘裏に探っていた賜物です」
「食えない人ですよね、東雲官房長官って」
「食えない上に周りの信頼が厚く、上に立つ人物だな。次期首相と言われるだけある」
「でも、私生活では愛妻家で子煩悩。噂では官房長官の部屋には妻と子供達の写真があるとか?」
「……ありますよ。ついでに言えば、実家には俺と妹の成長アルバム&動画が一面に収められた棚が三つ、母の写真が収められた棚が二つあります」
一颯はげんなりとしたような顔をしながら焼き鳥を頬張れば、汐里達は爆笑している。
身内の妻バカと親バカは恥ずかしい。
ましては有名人である父の本当の顔が明らかになるものだから余計にだ。
すると、一颯のスマートフォンに着信が入った。
一颯はディスプレイを見て、「げ」と本音が出た。
まさに噂をすればなんとやらというもので、着信の相手は父だ。
「誰からだ?出ても良いぞ」
「……父からです。滅多に寄越さないくせに、何でこんなタイミング良く寄越すのかな」
一颯はハイボール片手にニヤニヤと笑う汐里を睨んで、電話に出た。
此処で素直に出てしまう辺りは彼の素直さだ。
だが、一颯は此処で電話に出たことを後悔することになる。
「もしもし」
『一颯か?今平気か?』
「平気じゃなかったら出てないよ」
素っ気なく言えば、「愛想悪っ!」「素の浅川、愛想悪っ!?」と瀬戸と赤星の酔っ払い二人が弄る。
その隣では「反抗期の息子か」と椎名が枝豆を取りながら笑い、「うちの弟たちより質が悪いな」と一颯の隣で汐里が呆れた顔めグラスをテーブルに置く。