ひらり、と桜が舞う。
「……お前が死んでからもう二年だ」
目の前の墓石には《古賀家》と刻まれている。
自身の夢のために人を殺し、自ら命を絶った親友が眠る場所。
命日にはまだ日にちはあるが、命日来れるか分からないため手の空いている時に墓参りに訪れた。
「俺が目指している刑事にはまだ遠いけど、頑張るよ。だから、見ててくれ。啓人」
花を手向け、線香を上げて手を合わせる。
そして、駐車場に停めていた車へと戻った。
車内には相棒が乗っており、助手席の座席のリクライニングを倒して眠っていた。
ダッシュボードの上に足を乗せ、女らしからぬ豪快な体勢で。
「京さん、起きてください。あと、足!女の人なんですからそこに乗せない」
運転席に乗り込んで、女らしからぬ体勢で寝転ける相棒の足を叩けば、「うーん」と呻いて目を開ける。
寝ぼけ眼で見つめられ、ドキリとなる。
と言いたいところだが、普段の姿を知っているので何もならない。
「スカートじゃないんだから良いだろ……。まったく細かいな、お前は」
「俺が細かいんじゃなくて、貴女がガサツなんですよ。今日から新しい人がくるんだからしっかりしてください」
「お前は私のお母さんか」
彼女――京汐里は不満そうに座席のリクライニングを戻して、シートベルトを締める。
それを確認して、エンジンをかけてシートベルトを締めた。
そして、静かに車を走らせる。
捜査一課に異動して二年。
浅川一颯は咲き誇る桜を目にし、新たな年度の始まりを、春の始まりを肌に感じていた。