「可我士君?優秀でいい子よ。会えば挨拶するし、ご両親や妹さん達とも仲良かったみたいだし」





「養子って聞いてたけど、ご両親は本当の子供のように思ってたみたいよ」






「家族間での不仲?無いわよ」






椎名と赤星は話によれば、被害者の家族について近所に尋ねた際そう言った返答が来たという。
近所との関係も良好で、家族間での不仲もない。
だが、どうも汐里は可我士という少年が引っ掛かるようだ。





「なぁ、あそこら辺って高級住宅街だよな?」





汐里はデスクに向かいながら隣の一颯に問う。
一颯の実家付近に比べればランクは多少下がるが、高級住宅街と呼ばれる場所に被害者の家族は住んでいた。
ちなみに一颯もその住宅街のマンションに住んでいる。
それもかなりお高いデザイナーズマンションに。





「一応そうみたいですね。周りの家は皆でかいし、高級車ばかり停まってます」






「……お前が言っても何か嫌味にしか聞こえないんだが」







赤星のひきつった顔と椎名の同調するように頷く仕草に、一颯は「え?」と頭を傾げる。
椎名と赤星は一颯の実家に行ったことがある為、彼の実家が被害者の家族が住む家やその近辺の家に劣っていないことは分かっていた。
寧ろ、比べる方が間違いだと思うくらいだ。






「《東雲》邸はホントに高級旅館……」





「ボンボンが。オシャマンに住みやがって。この金持ちのボンボンが」






「今うちは関係ないじゃないですか」







一颯は久々に生まれのことを弄られ、ため息を吐いた。
《東雲一颯》ではなく、《浅川一颯》で警察官になってから早七年。
やはり、本名で警察官にならなくて良かったと今でも思う。
仮に本名で警察官になっていたときのことを考えると、頭が痛くなりそうだった。





「……そういえば、今回の被害者って国会議員じゃありませんでしたっけ?」





「あー、そうだな。ん?国会議員?」






瀬戸の言葉に、赤星がはて?と頭を傾げる。
そして、はっとしたように一颯の方を見た。
赤星だけではない。
汐里や瀬戸、椎名も一颯の方を見ていた。






「国会議員……」






「東雲官房長官……」






「東雲一颯……」






赤星と椎名、瀬戸はニヤリと笑った。
仲が良かったとは言えない三人なのに、今では意図が合致するほど意志疎通が出来ているようだった。
彼らの意図を一颯達も気付いたが、一颯には酷く憂鬱なことで先程よりも大きなため息を吐いた。