「あの!」





公園を出た後、パーキングに戻ろうとした三人だったが、ふと声をかけられて足を止める。
振り返った先にいたのは数日前の住宅火災の被害者の息子だった。
頬に火傷を負ったのか、大きな絆創膏を貼っている。






「君は確か……」





「はい。住宅火災の……」





被害者の息子は言葉を濁す。
彼は見たところ中学生くらいの年代で、まだ幼さの残る顔立ちをしていた。
こんな大人になりきれてないうちに父と兄弟を失い、どれ程辛いかは計り知れない。
それでも、彼は力強い眼差しをしていた。





「犯人は捕まりますか?」





「今追っているところです。ですが、絶対逮捕します」







「絶対に捕まえてください。犯人をオレは許せない。父さんと妹達を……」





彼の目に涙が溜まる。
一颯はそんな彼の頭を撫でて、「任せて」と頷く。
そんな二人の様子を汐里がじっと見ていた。
瀬戸は汐里がじっと二人の様子を見ていることを不思議に思いつつ、口には出せずにいた。





被害者の息子と別れ、パーキングに停めている車に戻る。
一颯が運転席で、瀬戸が助手席、汐里が後部座席に乗り込む。
各自シートベルトを締めて、一颯は署に戻るために車を走らせた。





「彼の母親は大丈夫ですかね?旦那さんと娘さん二人が亡くなって……」





「大丈夫ではないだろうな。何せ、最愛の夫と実の子は死んで、血の繋がらない子供が助かったんだからな」







「え?」





一颯の言葉に瀬戸は驚いた顔をする。
直後、瀬戸の座席を「お前は何見てる?」と汐里が後ろから蹴飛ばした。





「痛!?」





「もし、俺も後ろに乗ってたら京さんと同じことする。お前は何見てた?」






「え?」






「捜査資料。それに、住宅火災の被害者家族のことが書いてあっただろう?」






瀬戸は慌てて鞄から捜査資料を取り出すと、数枚めくり目を通す。
そこには確かに住宅火災の被害者の家族構成が載っていて、生き残った長男の所には《養子》と記されていた。
長男の名前は可我士(かがし)
長らく子が出来なかった夫妻が養子として引き取った子供だった。