「俺なら欺けると……?」
「そう。あの二人は完全に私を疑っていた。でも、貴方は違う。私を疑ってなかった。信じてくれていた」
瀬戸自身彼女を信じていた訳ではない。
ただ、色島が婚約者と友人を殺せるように見えなかっただけだ。
だが、見えなかったというのも外見から見た先入観がそうさせてしまっていた。
それが色島にも見破られ、結果がこれだ。
瀬戸は悔しかった。
自分ならば欺けると思われていたことが。
自分が出来る刑事だと過信していたのに、劣っていたという事実が。
先輩二人の方が優秀だと思い知らされたことが。
悔しいを通り越して、恥ずかしくなった。
「お前が二人を殺したのか……?」
「あら、怖い顔ね。そうよ、最初からそんな雰囲気を出して挑発していたのに、貴方は気付かないんだもの。面白かったわ」
「何故殺した?」
「私を裏切ったから。あ、でも、才賀を殺したのは私じゃなくて片山よ?私は彼を唆しただけ。まあ、片山を殺したのは私だけど」
色島は車を走らせながら自白とも取れる会話を始める。
最初の被害者の才賀は会社が《七つの大罪》という犯罪組織に繋がっていることを知らずに働いており、その事実を知って警察へ行こうとした。
だが、《七つの大罪》の信者だった片山にそれを知られ殺された。
片山は才賀を殺したことを自首しようとした所を色島に殺された。
「お前は《七つの大罪》の何なんだ?」
瀬戸の声は震えていた。
才賀は善意がある人間で、片山は《七つの大罪》の信者と言えど殺人の罪を償おうとした。
だが、色島には罪を償うような素振りは見られない。
寧ろ、善行として考えているようにも見える。
「私は《七つの大罪》の罪人が一人、《色欲》」
《七つの大罪》という犯罪組織は幹部のような立場の人間は罪人と呼ばれ、大罪を名として与えられる。
《色欲》が目の前いるということは歩かにもあと六人の罪人が存在していることが明らかだった。
瀬戸は無意識に震える身体を押さえつける。