「腐ったやり方でしか秩序は保てない。人は愚かで、残酷で、悲しい存在なんだ」






「……知ってます。だから、俺もこんな風に腐ったやり方を黙認して、協力しているんです」





侑吾の無礼極まりない言葉に、久寿も逞も咎めることはない。
彼が言っていることは何一つ間違っていないから。
自分達のやり方は腐っている。
分かっていてもそんな形でしか秩序を保てないのだ。
侑吾もそれを分かっているからこそ、不快でしかない。





「俺は仕事に戻ります。部下に仕事を任せきりにしているので」






「ああ。何かったらまた頼むよ」







久寿の言葉に侑吾は頭を下げて病室を出ていこうとする。
だが、何か思い立ったように足を止め、久寿達の方を見た。






「……一つ、言い忘れたことがあります」






「何だ?」






「《あの二人》はきっとこの腐りきった真実に辿り着きます。そして、幻滅するでしょうね」






侑吾の言葉に、久寿達は何も言えなかった。
あの二人、一颯と汐里はきっとこの真実に辿り着く。
知ったときに幻滅される、それは分かりきっていた。
それでも、この日本がかりそめの平和を保つには腐りきり、間違ったやり方でも行わねばならないのだ。






法律で裁けない、表には出せない事件は数え切れないほど起きている。
それなのに、国民誰一人としてその事件を知らないのは隠している者がいるからだ。
国民はその隠している真実があることすら知らない。
いや、知らない方が幸せなのかもしれない。






それはあまりにも非人道的で、残酷な真実なのだから――。