その頃、瀬戸はというと――。




「えっ!?色島さんって○△高校の出身なんですか?実は俺もなんです!」





「奇遇!じゃあ、英語の成田先生分かりますか?」





「はい!めっちゃ独特のアクセントをつけてて、英語の発音が分かりづらかった!」





「そうそう!」





色島望と出身校が一緒ということで、意気投合していた。
現在瀬戸は色島が運転する車で移動中で、瀬戸自身彼女が何処へ向かっているか知らなかった。
ただ、市街地から離れていることは分かる。





「……あの、色島さん。何処へ向かっているんですか?」





「私のとっておきの場所です」






急に不安にかられた瀬戸は運転席に色島を見ると、太股に蠍のタトゥーがあるのを見つけた。
カフェでは気付かず、今になって気付いた。
殺人事件の被害者の一人には蠍の焼き印が押されていた。
もしや、と頭に過ったとき、瀬戸のスマートフォンが鳴る。
ディスプレイには京汐里の名前が映し出されていた。





「すみません、職場からです。はい、瀬戸で――」





『お前、今何処にいる!?色島は!?』






「え、それは……」





『色島と一緒なら絶対逃がすな!あと、自分の身を守れ!間違っても相手主導に――』







「残念。もう遅いわよ」





瀬戸のスマートフォンを奪い取り、汐里にそう言った色島は窓を開けるなり、スマートフォンを外へ捨てた。
いきなりのことに瀬戸は唖然とするが、我に返った。





「俺のスマホ!?おい、何す――」





「油断したら駄目よ、刑事さん。私は殺人事件の容疑者なんだから」






色島は赤い口紅が塗られた唇を持ち上げ、妖艶に微笑む。
それは見る人が見れば、誘っているように見える。
が、見方を変えれば、危険な笑みだ。
狂喜――例えるならば、その言葉が相応しい笑みだ。





瀬戸は色島が容疑者であることをすっかり忘れていた。
事件のことで相談したいことがある、と色島から連絡をもらい、刑事として頼られていると舞い上がった。
だが、実際は違う。
名刺を渡したのは一颯、汐里、瀬戸の三人。
この中で上手く欺けそうなのはいかにも新人という雰囲気の瀬戸。
それに瀬戸が気付いたのは今だった。