翌日。
アパートの一室でこの部屋に住む男の死体が発見された。
第一発見者は男の交際相手で、旅行先から帰ったら男がベッドの上で滅多刺しにされて死んでいたらしい。
前回と前々回同様身体には《luxuria》の文字が刻まれ、蠍の焼き印がされていた。





「luxuria……蠍……」






「《七つの大罪》の色欲を象徴する動物は蠍……。やはり、この事件には《七つの大罪》が関係しているのでしょうか」





一颯と汐里は被害者二人に加え、今回の被害者の写真が貼られたホワイトボードを見て唸っていた。
殺害方法はほぼ同じで、《luxuria》の文字と蠍の焼き印。
一番最初の事件には蠍の焼き印が皮膚に押されては居なかったが、二件目からは蠍の焼き印が皮膚に押されている。
まるで、犯人は一緒だと主張しているように思えた。





「……そういえば、瀬戸は?」






一颯はいるはずの後輩の姿がないことに気付き、周りを見渡す。
瀬戸は非番のため朝から出勤していないのだが、一颯は今気付いたらしい。
ちなみに今は午後三時を回ったところだ。





「今気付いたのか。女とデートらしいぞ」





「へぇ。どんな女の子ですかね」





「知らん。何でも、相談したいことがあるとかで女の方から呼び出されたとか言ってたな」





「へぇ。その女の子って色島望だったりして?」






一颯の冗談に、汐里は「馬鹿か」と一蹴する。
すると、汐里はスマートフォンにメッセージが届く。
送信相手は赤星で、写真も送られてきていた。






「『瀬戸が女の子とデートしてる!』。この写真隠し撮り――っえ?」






メッセージの内容に、汐里の顔が凍り付く。
何事かと不躾ながらも一颯は彼女のスマートフォンを覗き込む。
そして、汐里同様凍り付く。
赤星から送られてきた写真には瀬戸と容疑者の色島が映っており、仲良さげにカフェにいた。
が、瀬戸は気付いていないのか、私服でショートパンツ姿の色島の太股には蠍のようなタトゥーが彫られているのが見える。





「蠍のタトゥー……」






「あの馬鹿……。行くぞ、浅川!」




一颯と汐里は瀬戸と色島がいるであろうカフェへと車を走らせた。
だが、既にそこには二人の姿はなかった。
一颯達には確信はないが、瀬戸と色島が共にいるのは危険な気がしていた。
色島は連日の殺人事件の犯人の可能性が高い。
それなのに、瀬戸は――。





「見つけたら、正座させて説教だな」






汐里の言葉に、一颯は頷いた。
その前に瀬戸を見つけなくてはならない。
「クソが……」と汐里が舌打ちをして、スマートフォンを取り出す。
そして、とある人物に電話する。




「京です。貴方に頼み事をするのが嫌すぎて頭痛がするし吐きそうだが、頼みがある。……《七つの大罪》の、《色欲》の居場所の検討がついているなら教えてほしい」