翌日。
一颯は捜査一課に置かれたテレビから流れる光景に動揺を隠せなかった。
彼の隣にいる汐里も明らかに動揺し、怒りを抱いているように見えた。
『速報 久宝公武首相が暴行傷害、殺人未遂の疑いで逮捕。七つの大罪との関与も浮上 警視庁』
というテロップがテレビの上に出ていた。
七つの大罪が関与していると掴んでいたのは公安と所轄の捜査一課である一颯達のごく一部。
捜査一課は上の命令で捜査打ち切りと言われていた為、東雲家の力を借りて久宝の悪事を暴こうとしていた。
だが、公安はその命令を受けていない。
つまり――。
「あのクソ兄が……」
汐里は苛立ちを露に、近くにあったゴミ箱を思い切り蹴飛ばした。
ゴミがその場に散乱したが、誰も気に止めない。
それほどテレビから流れる情報が大きすぎた。
一颯の後ろでテレビを見ている椎名や赤星、瀬戸も悔しそうな顔をしていた。
「失礼する」
すると、捜査一課のフロアに公安の氷室とその部下、数人の捜査官が現れた。
間の悪いことに、汐里は氷室の姿を見つけるなり、大股で近付くと胸ぐらを掴み上げた。
まさに一触即発状態だ。
「か、京さん!?」
一颯が汐里に駆け寄ると、彼女を氷室から引き離そうとするが離れない。
そんな中でも氷室は周りの捜査官に目配せをして、フロアへと足を踏み入れた。
そして、瀬戸の前で足を止めた。
「瀬戸司さんですね。七つの大罪への関与の疑いでご同行願えますか?」
「なっ!?」
瀬戸は息を飲んだ。
そんな瀬戸と捜査官の間に、椎名と赤星が割って入る。
「その証拠は?」
「証拠はあります。ですが、貴方がたに話す必要はありません」
「は?」
捜査官の言葉に、椎名が元ヤンモードに入った。
赤星も赤星で、可愛いポメラニアンの顔が威嚇中のポメラニアンに変わっていた。
「必要がない?なら、瀬戸は――」
「彼を渡さなかった場合、困るのは貴方がたの方ですよ。捜一が犯罪者を匿っていた、そんな噂を流されても宜しいのですか?」
捜査一課の一部は瀬戸が七つの大罪に捜査の一部を漏洩していたことを知っている。
本来ならば、情報漏洩は規約違反。
ましては今警察内を騒がせている犯罪組織に流したとなれば、関与を疑われてもおかしくはない。