「あの、一つ質問しても?」





「何だ、浅川?」






「何故つい先程の会話が再生されるんですか?この盗聴器って二階堂さんが仕掛けたものではありませんよね」






「それは俺が盗聴器のシステムをハッキングしたからだよ。仕掛けた側にはバレないようにハッキングの回線を複雑にしてね」






あっさりと犯罪を言ってのけたのは二階堂だった。
二階堂もれっきとした警官で、ハッキングが犯罪であることを重々承知しているはずだ。
それなのに、あっさりと言ってのけた。
しかも、汐里や司馬も何も言わないので、一颯は混乱する。





「ハッキングって……。良いんですか、犯罪ですなんですよ!?」






「本来駄目だが、今は物理的証拠が必要だからな。……お陰で盗聴器を仕掛けた張本人が明らかになった」







汐里は二階堂の方を見た。
彼の手にはタブレットがあり、明らかになったばかりの情報をディスプレイに映し出す。
そのタブレットを一颯と瀬戸は後ろから覗き込んだ。
内容に一颯は息を飲んだが、瀬戸は悔しげな顔をしていた。





「司馬課長の執務室に仕掛けられた盗聴器の購入履歴をメーカーに問い合わせた結果、購入者のメールアドレスを入手できた。そのメールアドレスを辿ったら瀬戸署長がプライベートで使っているものと判明した」





「つまり、盗聴器は瀬戸署長の仕業?何故、盗聴器なんか――っ!?」







一颯はそう言いかけたが、瀬戸の言葉を思い出した。






瀬戸の父と妹は七つの大罪に荷担している。
久宝のことを怪しんだ一颯達が捜査を始めることを知り、久宝の捜査の為に司馬へ何かしらのアクションを踏むと考えたのだろう。
一颯達が捜査を始める頃と盗聴器の購入履歴の時期はほぼ一致、盗聴器が司馬の部屋に付けられていることが判明したのは今日。
捜査を始めてから約二週間、その間に一颯達が司馬に捜査の経過を報告したのは一回。
久宝が七つの大罪の傲慢である可能性大と報告したものだ。







「捜査が筒抜けだった。それと同時期に東雲官房長官が京警視の協力者として暗躍、それが何処からか久宝の耳に入り、殺されかけた」





司馬は盗聴器に気付かなかったことを悔やんでいるようだった。
だが、一颯の父の協力者のことに関しては息子である一颯でさえも知らなかったことだ。
協力者の情報は必ず守られる。
それなのに、何処から漏れたというのだろうか。
考え込む一颯を他所に、汐里は瀬戸の方を見た。