「何で打ちきりになんか……」
久宝の七つの大罪への関与を裏付ける捜査が打ちきりになった。
同時に、久寿の殺人未遂の立証も難しくなったことを意味する。
恐らく、久宝による何らかの圧力がかけられ、打ちきりにせざる負えなかったのだろう。
「久宝の仕業でしょうね。上から圧力をかけて打ちきりにさせるなんて、自らがクロであることを言っているようなものなのに……」
「それに気付いていて、打ちきりの命令を出す。これで上と久宝は癒着していたのが裏付けられたな」
汐里は苛立ちを抑えつつ、スマートフォンをポケットにしまった。
さすがに今回は最新のスマートフォンに変えたばかりなので、怒りに任せてぶん投げたりはしなかったようだ。
それか、スマートフォンのデータ復元のために二階堂の手を借りて、アホみたいな量の八つ橋を彼に買い与えるはめになり、面倒だったからだろうか。
それよりも警察上層部と久宝の癒着は見過ごせない。
それが本当なら久宝の罪を問うことは叶わない。
それどころか、七つの大罪の、神室の逮捕すら危うい。
そうなれば、七つの大罪による被害者がまた増えてしまう。
「上層部と久宝が癒着していたら、今後どうなるんですか?」
「さあな。久宝の正体に気付いた私やお前、捜査一課の連中は恐らく飛ばされるかもな」
「っそれじゃ、父が身体を張った意味がないじゃないですか!?」
一颯は椅子から立ち上がるが、篁に宥められ椅子に座り直す。
久寿は息子の力になり、息子を守るために自ら身体を張った。
結果、久寿は瀕死の重傷を負ってICUに入り、生死をさ迷う形になってしまった。
それまでして久宝の正体を暴いた父のためにも久宝の罪を問いたかった。
それなのに――。
「――おい、何か言いたいことがあるならこっちにこい」
ふと、汐里が誰もいない空間を睨んでは声かけた。
それに答えるように、車で待っていたはずの瀬戸が姿を現した。
瀬戸は車にいたときと同じように顔を青くして俯き加減で一颯達の方へ来た。
そして、突然一颯の前で土下座をした。
「せ、瀬戸!?何して――」
「浅川さん、東雲官房長官が刺されたのは俺のせいです」
瀬戸の言葉に、一颯は息を飲む。
父が刺されたのが瀬戸のせい?
それは一体どういう意味だろうか。
一颯が問いかける前に行動に移したのは汐里で、土下座する瀬戸の胸ぐらを掴み上げていた。