「本当に毎回止めてくれません……?」





京家恒例のパーティーの翌日。
一颯は運転席でハンドルに額を押し付けて頭の痛みに悶絶していた。
毎度恒例の一颯の二日酔いである。
炭酸ジュースだと思われたが、それはかなり薄められた焼酎の炭酸割りだったようで、一颯は「ん?」と思いながらもコップ一杯飲み干した。
結果これである。






「今回は私じゃない。兄と母が面白がってやったんだ」






助手席の汐里は一颯の倍は飲んだというのに、平然と野菜ジュースを飲んでいる。
運転は相変わらず二日酔いの一颯なのは汐里が運転したら頭痛だけでなく、上から出かねない。
それだけはごめんなので、一颯は頭痛をまぎらわせるためにコンビニで買った栄養ドリンクを飲み干す。





「京家のいたずら好き、どうにかなりませんか。毎度やられてるこっちの身にもなってください」





「毎度引っ掛かるお前もお前だよな。少しは警戒しろ」





「俺も迂闊ですね、はい」






汐里の言葉を聞く限り、京家のいたずらはなくなりそうにない。
むしろ、一颯の反応を面白がってやり続けるだろう。
一颯はため息を吐きつつ、後部座席の瀬戸をルームミラー越しに見た。
彼はただぼーと窓の外を見ている。






「瀬戸、今日大人しくないか?体調でも悪いのか」





「い、いや、平気です。それより、どの子が久宝首相の娘さんなんですか?」






瀬戸は一度一颯と目を合わせたものの、話をそらすように目をそらして窓の外を見た。
窓の外には下校している小学生達の姿があった。
今三人は久宝の娘が通う小学校の校門の前にいた。
汐里の母の話では久宝の娘は登下校も徒歩で、友人達と帰っているらしい。






「うちの末の弟が一緒に来ることになってる。あ、来た」






汐里は末の弟の朝陽の姿を見つけ、車から降りていく。
その後を一颯と瀬戸も追いかけた。
朝陽はキョロキョロと周りを見渡していたが、「朝陽」と汐里が呼べばこちらへ駆け寄ってくる。
朝陽の後ろを一人の女の子がついてきたことで、この子が久宝小春であることが分かった。





「汐里ちゃん、この子が小春ちゃんだよ」






「初めまして、久宝小春です」





礼儀正しく頭を下げる小春。
一般の子供と同じように育てたいという母の願いとは裏腹に、小春は同い年の子よりも大人びているように思えた。
一緒にいる朝陽など、一颯の姿を見つけては「一颯君!」と甘えるように抱き着いていた。